横島勝人近影
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職人気質
先日「シューベルト」の大阪公演が終わりました。
この舞台は、姿月あさとさんはじめ宝塚歌劇団関係、文学座、二期会、日生劇場、関西フィルなど様々なジャンルからたくさんの方が集まって創り上げていく、全く新しい「音楽ドラマ」というものでした。 舞台の上にオーケストラをのせ、その前や後ろでシューベルトの一生を演じていくという上演形式。芝居がまずあり、それに音楽をつけていくという形なので 稽古には私自身もスコアだけでなく分厚い台本まで持って臨みました。(台本と いうものを生まれて初めて見ました。)

稽古場の雰囲気は今まで私が経験した事のないものでした。
そこでは役者さんたちの熱く力のこもった迫真の演技が繰り広げられていて、 芝居とはこれほどまでに技術と体力とエネルギーが必要なのかと驚かされました。
稽古中も思わず見とれてしまい音を出すのを忘れたこともあったほどです。
今までふれたことのない世界に接して新鮮な感動を覚えました。

今回の公演では宝塚や日生劇場の舞台関係者が全面的に協力してくださっていま した。彼らは舞台の仕事一筋という方ばかり。裏方のプロと呼ばれる人たちでした。
照明や音響、小道具、大道具などを駆使して舞台をあっという間にシューベルト の家 から学校、そしてコンサートホールへと変えてしまうその手際のよさは実に見 事でした。 リハーサルの準備や進めて行く段取りもスムーズで、オーケストラ側に問題が 起こったときの対応もとても早く、おかげで私はシューベルトの音楽を オーケストラから引き出す事だけに集中できました。

そういえばずいぶん前になりますがミュンヘンのバイエルン国立歌劇場のサロメの 舞台稽古を見た時のことを思い出しました。
いくら有名でも難曲中の難曲です。その稽古で私は驚きました。
演出家が動きだけでなく音楽や歌詞まで全て覚えているのです。
スコアも何も持たずに歌手や裏方に指示を出し、しかも言われたほうはそれを全 て一回で理解し覚えてしまう、その能力の高さと無駄のない仕事ぶりに 圧倒されました。 その時私は全員がまるで職人のようだと感じたのです。
演出家、歌手、オーケストラ、稽古ピアニスト、大道具に衣装、照明まで、もち ろん指揮者さえもその時は音楽家ではなく職人に見えてしまいました。
サロメを3日間で作り上げていく過程はまるで大きな大きな家があっという間建っていくようで ヨーロッパ音楽の深い歴史を感じました。

今回の「音楽ドラマ」でも、良いものを作ろうとみんなが意気込んでやっていまし た。 サロメで感じた職人気質が「シューベルト」でも感じられ、 稽古から本番までの数日間、シューベルトの音楽と人生に浸れる 心地良い時間を過ごす事が出来ました。
東京公演でのみなさんとの再会が今からとても楽しみです。

【2005年5月19日】


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