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ドイツ演奏旅行の思い出  その4
ベートーヴェンの第九のスタートは以前に書いたゲバントハウス管弦楽団のコンマス(コンサートマスターの略)との出会いから始まりました。 コンマスの大きな仕事のひとつに指揮者の音楽を瞬時に理解しオーケストラに伝えることがあるのですが、 人が違えば感じ方も違ってくるもので、大げさに言うと指揮者にとって同じメンバ−でもコンマス1人が違うと まったく違ったオーケストラになってしまうのです。今回彼の存在はオケにとっても私にとっても大きく 素晴らしい仕事ぶりでした。リハの途中でコンマスが盛んにオケ側に言っていたことは、いかにゲヴァントハウスで 良い音を響かせることができるのかという事。彼はホ−ルを熟知していて、オーケストラに弓の使う場所や 音の出し方など的確に指示を出していました。 さて本番の会場のゲヴァントハウスですがゲヴァントハウス管弦楽団(実に250年以上もの歴史を持っているのです。)の本拠地であり、 ホール内部の廊下には多くの展示品が飾られ、中にはモーツァルトやシューマン本人がこのオケと行った演奏会の プログラムや、リヒャルト・シュトラウスが楽団のメンバーと撮った写真などのお宝ばかり、まるで博物館の様です。 しかしホールの本当の素晴らしさを実感できたのは、やはりステージリハーサルでオーケストラの音を聴いた時でした。 コンマスの彼が「どう、いいホールでしょ?」と言いたげな顔で演奏しているのを見て、この人は本当に このホールとオーケストラを誇りに思っていると感じました。

本番は大成功に終わりました。今回のこの第九コンサートはペーター・エッシャーという方が作った小児がんのチャリティ・コンサート。 チケット売り上げは全額寄付することになっていて、新聞にも大きく取り上げられていました。 おかげで地元の関心も高く、客席はほぼ満員となり、 その客席から大きな拍手を受けオケのメンバーや合唱団それにソリスト、皆満足顔。 私もホッと一安心。演奏会終了後にシューマンの名前の付いている ロビーで盛大にパ−ティ−が開かれました。 その時初めてペ−タ−・エッシャ−氏にもお会いすることができ、 今回の演奏会の成功を大変喜んでいらっしゃいました。

今回ライプツィヒでの2つの演奏会は良い思い出となりましたが、もう1つ忘れられない 出来事がありました。それは私のロ短調ミサのスコアの事なのです。 ロ短調の本番当日、通し稽古が終わり、 ホテルにいったん帰って、カバンからスコアを取り出そうとしたのですが、スコアが入っていません。 落ち着いて考えてみると、ニコライ教会に置き忘れてきたようなのです。 リハーサル後にスコアを忘れたことなんて今までに無かったので、 とてもあせってしまい、慌てて教会に取りに戻りました。 こちらの心配はよそに、うれしそうに先程と同じ指揮台の上にのっているではありませんか。 なぜかまた同じことをその演奏会終了後にやってしまいました。 本番が終わり皆と一緒にわいわいと打ち上げ会場に向かって歩いていて、 ふとカバンが軽いことに気が付きカバンを開けてみると、やっぱりスコアがありません。 また指揮台の上に忘れてきたようで、ニコライカントルに連絡を取り、探してもらうことになってしまいました。 2度も忘れるなんて・・・。もしかしたらこのスコア、ニコライ教会に残っていたかったのかも。 その問題のスコアですが今は自宅の本棚にライプツィヒに帰りたそうに他のスコアと一緒に並んでいます。 「またこのスコアをあの街に連れて行けると良いのにな−」、そんな風に思っています。

                                  終わり

【2005年10月31日】


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