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指揮棒
指揮者にとって指揮棒はスコアと同じく大切な商売道具のひとつですが、 それぞれ人によって好みが違います。

ある指揮者の知人はウィーンでしか売っていないものを使っていて、 私がウィーンに行くときに「できるだけたくさん買って来て」と言われ、 何本も持って帰ってきたことがありました。 私のは、指揮の勉強を始めた頃から20年近くも 同じメーカーのもので標準の長さより少し短いタイプを使っています。 今までに一度だけそれより長めのものを使ったこともあるのですが、 しっくりいかず思うように棒を持つ手が動かなかったので、すぐにあきらめてしまいました。 その時以来違うメーカーのものや長さのものをためしたことは一度もありません。 そういえば大リーガーのイチロー選手もバットのタイプをずっと変えていないそうで、 分野は違いますが感覚的には非常に似ているかもしれません。

この私の好きなタイプの指揮棒ですが、素材はグラスファイバーでできています。 他の素材のものと比べてみると、非常に軽く、私はとても振りやすいので気に入っているのですが、 軽さのためか練習中に何度か飛ばしてしまうことがありました。 オーケストラの人に当たると大変なことになるので、いつも飛ばした時はヒャッとします。 (オーケストラの皆さんごめんなさい。) こんなことがあるために本番のときは必ず指揮者用の譜面台の上に予備棒を置くようにしています。 スコアを置かず暗譜で指揮を振るときでも譜面台の上には指揮棒がお守りのように置いてあります。 幸いこのお守りは一度も使ったことはありませんが。

自宅には今使っているタイプの指揮棒数本の他に特別な棒が一本だけあります。 それは指揮者の佐渡裕さんからい頂いた棒で、佐渡さんがウィ−ンに住んでいた頃彼の自宅に遊びに行った時に 「頑張って」と励まされもらった思い出の棒です。私の使っているタイプとまったく長さも重さも 違うものなのでまだ使ったことはないのですが、私にとって大切な指揮棒。 その棒を見るたびに初心に帰ることができ、また佐渡さんの「頑張って」という言葉を思い出させてくれます。

皆さんが次にコンサートに行かれるときは是非指揮者の手を良く見てみてください。 そこにはこだわりの指揮棒がありますから。

【2006年3月31日】


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