横島勝人近影
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指揮者の休日
夏休みという言葉は何となくうれしくなってしまうのは私だけではないと思う。
日本は以前よりだいぶ休みをうまく使っている人が増えているような気はする。
ウィーンに住んでいた頃、オーストリアでは国によって約1ヶ月の休暇が 法律で定められている事を知り、初めはえらく驚いたものだった。 店員でもサラリーマンでも、皆当然のように休んでいた。働いている人を横目に 「明日から1ヶ月来ないけど、留守中よろしくね。」という感じで堂々と胸を張って 休暇に皆出かけて行く。留守を預かる方も「次は自分の番だからあともう少し頑張って働こう!」 そんな感じだった。

ウイーンフィルも6月のオペラが終わったらザルツブルグ音楽祭が始まる7月の終わりまでの 約1ヶ月は演奏会が無い。以前ある指揮者が休暇について私に話をしてくれた。 「昔は年中休みを取らず、ずっとコンサートを入れていた。音楽シーズンが休みの夏は夏で音楽祭にも出演していた。 しかし年を取るに従い身体がついてこなくなってしまい、 あるときこれでは駄目だと思いはじめ、ある年の夏、思いきって山の上の別荘にこもる事にした。音楽が無い世界に身を寄せたおかげで 次のシーズンからまた新たなエネルギーが自然と沸いてきた。休暇は重要だ。だからあなたもしっかり休まなくてはいけない。」 大まかにはそんな話だった。亡くなられた岩城さんもご自身の本の中でそんな事を書かれていた。

そのせいというわけではないが、今の自分もここ何年か少しそのことを考えるようになった。 カラダも休ませなければいけないが、実は頭を休めなくてはいけないという事に最近気がついてきた。我々指揮者の仕事は身体を使っている様に 思われているが、実は80%は頭で音楽をやっているといって過言ではないと思っている。 頭が疲れているときは素敵な音も想像できなくなるし、オーケストラや歌手からいい声を引き出せなくなるのだ。 家にいても机に向かってじっとしている方が多いのでとても地味で暗い仕事。オーケストラの前に立った時にようやく身体を動かす事ができるのだ。楽器奏者のほうが、数倍身体を使っていると僕は思う。 だから今は身体を休めるより、頭を休めることに重点を置くように気をつけている。何も考えないという方法もあるとは思うが、音楽以外のことに夢中になるのも いい手だと思う。

この頃はこの時期本をまとめて読むことにしている。日頃スコアばかり眺めているので書店で見つけた読みたい本が結構たまっている。 まだまだまとまって休みを取る事が下手だが、そろそろ計画的に休みを取り、そんな本や趣味などを楽しむ時間を作りたいと思う。 そして良い休暇の使い方を研究して、いつも新鮮な気持ちで音に向かえるようにしていきたい。

【2007年8月1日】


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